加藤淳平 - 現代日本人の意識の倒錯(五)女性、結婚、育兒化 - 三十
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日本の文化傳統、
     如何にして切斷せられしや
                  加藤淳平


三十 現代日本人の意識の倒錯(五)女性、結婚、育兒


 現代の日本にて、歐米至上視の殊に強きは女性なり。歐米に憧れ,歐米男性との結婚を念願する日本女性多し。特に社會の上層階層に屬する女性の間に、歐米人男性との結婚願望擴れり。斯て日本人と歐米人との結婚の多くは、日本人女性と歐米人男性の結婚なり。

 又日本の若き女性、教育、テレビ、雜誌報道等に影響せられ、地方の農家等に嫁ぐを嫌ふ。日本古來の生活は、因習的なりとて嫌惡し、都會的、歐米的生活こそ良き生活なれと信ずればなり。地方農村等の男子、配偶者として、日本女性を娶り得ざれば、妻女たる女性を、東南亞洲に求む。

 現代日本の「國際結婚」なるもの、大方は、歐米人男性と上層、中間層の日本女性、下層の日本人男性と東南亞女性の結婚なり。現代日本人の、歐米は上、日本はその下、亞洲は日本より下なる價値觀、茲に端的に表る。


 占領期の日本は、米國の植民地たりし如しと上に述ぶ。往時の歐米植民地にありては、植民本國より到來せる者、男性多かりし故に、植民地人女性の待遇、植民地男性の待遇に比ぶれば、苛烈、差別的なる度合ひ少かりき。占領期の日本、此の例に漏れず。占領軍の「男女平等」の建前より、懷柔せられたる婦人運動家等、熱心な る「戰後思想」の信奉者となれり。

 斯る婦人運動家等を通じ、歐米至上視、規準視、日本・亞洲蔑視の價値觀、廣く日本女性に浸透す。戰前より基督教會の、上層女子教育に力を注ぎたるも、一因なりけむ。上層、中間層の女性等、日本、亞洲の文化を價値無しと視たれば、日本の文化傳統を決定的に破壞す。日本の文化の中核、多く女性より女性の、世代的傳承に 依存すればなり。

 典型的なる一例を擧ぐれば、乳幼兒は背に負ふこそ、日本の母親の習慣なりしか。されど現代日本の若き母親等、歐米風に乳幼兒を腕に抱くを宜しとし、背に負ふを恰好惡しとて嫌ふ。母親の肉體的負擔少き「おんぶ」を嫌ひ、疲勞大なる「だっこ」に固執すれば、母親の肉體的負擔増大し、乳幼兒との肌の密着、長時間なるを得 ず。肌の密着は、日本人の育兒の基本なれば、之の少なき乳幼兒、精神的安定を失ふなり。若き世代の日本人、精神的安定を喪ひたるは、茲に一因ありしと言ひ得べきか。

 歐米を至上視、規準視せる「戰後思想」の價値觀、日本女性の間に浸透せるは、次世代日本人の精神的發達を沮害するに至りぬ。


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