加藤淳平 - 日本の文化傳統、如何にして切斷せられしや(前篇)- 二十四 |
推奨環境:1024×768, IE5.5以上 |
日本の文化傳統、 如何にして切斷せられしや(前篇) 加藤淳平 二十四 「民族の裏切者(一)」 中國語に「漢奸」なるおぞましき語感の言葉あり。日中戰爭に中國勝利を收めし 後、多數の對日協力者、「漢奸」即ち民族の裏切者とて處刑せらる。 日本の、有史以來なる大敗戰を喫せし、國民の前代未聞なる檢閲・洗腦の苦難を受 けし時、占領軍に協力せる者らは、中國語に倣はば之を「日奸」と呼ぶべし。されど 國語に「日奸」の語無し。民族の裏切者と呼ぶ外無かるべし。 民族の裏切者の最たるは、總司令部民間檢閲部にて働きし、日本の出版物、私信等 を英語に飜譯せる日本人常勤檢閲員ならむ。 日本の敗戰直後、米軍機關に働きて、米軍物資を入手し得る特典に惠まるる日本人 に對し、一般人が反感亦強かりき。殊に總司令部檢閲員は、當時の給與所得者が平均 給與に倍する、潤澤なる報酬を受く。而も檢閲員らが日常業務は、間諜行爲なり。良 心の呵責と肩身狹き思ひ、有らざる可からず。檢閲員數、五千有餘人は昭和二十二年 の數値なり。要員の入替りを考ふれば、占領期全期間に、一萬人に上らん。此は小さ き數に非ず。然れども此の内、占領軍檢閲員を勤めたる事實を、後日、履歴に書き、 或は他人に語りし者、ほぼ皆無なり。ほぼ全員、檢閲員が經歴をひた隱しに隱す。 ▼ 二十五へ ▼「侃々院」表紙へ戻る ▼「文語の苑」表紙へ戻る |