加藤淳平 - 日本の文化傳統、如何にして切斷せられしや(前篇)- 十八
推奨環境:1024×768, IE5.5以上




日本の文化傳統、
     如何にして切斷せられしや(前篇)
                  加藤淳平


十八 戰爭罪惡感植付計画


 米軍が宣傳弘報活動の内、最重點の置かれしは、ウォー・ギルト・インフォーメーション・プログラム(WGIP)、即ち日本人に、戰爭が罪惡感を植付くる計畫なりき。此の計畫は、一九四五年十月より作動す。占領軍當局、「太平洋戰爭史」を記述、校閲し、同年十二月八日の開戰が日より、新聞各紙に連載を開始せしむ。


 そは、米國が觀點より、第二次大戰の亞洲・太平洋の戰ひを記述せる資料なりき。「太平洋戰爭」なる名稱、米國の觀點より見たる戰爭なりしを示す。米國人より見る時、日本との戰爭は凡て、太平洋方面にて戰はる。亞洲の戰爭と見し日本人と、視點相違せり。


 米側に都合惡き事、戰前の日本人移民に對する差別、迫害が如きは全て隱蔽し、一方的に、日本を斷罪せる内容なりき。亞洲解放の戰ひの性格は、無視せられたり。專ら日本軍の、亞洲各地に働きし殘虐行爲を誇張し強調す。日本を亞洲より切離す意圖、露はなりき。「太平洋戰爭史」は、ラジオにても劇化し、放送せられたり。又總司令部命令に依り、昭和二十一年四月より、國史授業の教材として使用を指示せらる。米占領軍が指示の報道、教育の場に及びし事、斯の如し。


 「太平洋戰爭史」による洗腦の效果は甚大なりき。先の戰爭は、日本の仕掛けし侵略戰爭なりとの米國の見方を強制せらるるに因りて、日本人の多數、自國を貶め見るに至れり。自國への誇りと、愛國心を失ひ、傳統文化を忌避す。文化傳統斷絶は進みぬ。


▼ 十九へ
▼「侃々院」表紙へ戻る ▼「文語の苑」表紙へ戻る