加藤淳平 - 日本の文化傳統、如何にして切斷せられしや(前篇)- 十三 |
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日本の文化傳統、 如何にして切斷せられしや(前篇) 加藤淳平 十三 嚴格なる檢閲 米軍が檢閲手續きは、綿密に規定せられたり。新聞雜誌、書籍の發行者は、完成せるゲラ刷りを一件毎に、日本語、羅馬字二版の説明資料と共に提出し、事前に十分なる餘裕を以て檢閲を受くるを要せり。後日、發行印刷物と檢閲に供したる草稿との嚴重なる檢証、寸分の違ひも逃る能はざりき。 檢閲は、ポツダム宣言違反なる事明白たりしに因り、其が存在は嚴に祕匿された り。檢閲を受けし後の出版物、檢閲の痕跡を殘すも禁ぜらる。戰前戰中に於る日本の 檢閲は、伏字數多使はれ、讀者は、伏字より原文を推測するを樂しみとせり。米軍が 檢閲に在りては、斯る樂しみ、一切許されざりき。 敍上の如く、日本政府・軍の檢閲は、檢閲者と被檢閲者に日本人同士が氣安さあり き。米軍檢閲も、檢閲員は日本人なれど、日本人檢閲員は、米國人上司より、嚴重に 監視されたり。檢閲者と被檢閲者の親しみ合ふ事無し。馴合ひの發見さるる時は、嚴 罰を受く。目零しは許されず、小さき違反も嚴しく追求されたり。 ▼ 十四へ ▼「侃々院」表紙へ戻る ▼「文語の苑」表紙へ戻る |