逆旅舎>泰通信 第七號
推奨環境:1024×768, IE5.5以上





泰通信 (第七號)


         平成十七年二月  大口 童遊


パーク・タ-イ・マイ・サゴップ Phaak Taay Mai Sagop (南方不穩)


 連續爆發、九人負傷――タイの英字紙「バンコク・ポスト」は二月十五日、マレーシア國境ナラティワート縣にて 前日起きしイスラム過激派によるテロを大見出しにて傳ふ。當日はフィリピンにて死者十一名を出せる同時多發爆發、 ベイルートにても死者十七名を出す爆發テロあり、泰の事件は國内報道に止りたるやうなり。


 そのふた月ほど前の十二月五日、プーミポン國王七十七囘目の誕生日祝賀の一環として、 ヤラー、パッターニ、ナラティワートの深南部三縣上空に一億二千萬羽の折鶴舞ひき。 貧しきイスラム系住民集中せる三縣にては昨年、分離獨立派と見らるゝ武裝集團によるテロと治安部隊との衝突により計六百人近く死亡、 治安極度に惡化し、國王の憂慮を受け強硬姿勢を軟化せるタクシン首相(五四歳) 國民に呼掛け集めたる折鶴を空軍機五十機にて撒きしものなり。


 泰深南部に於けるテロは二○○二年に始り、軍武器庫襲撃、警察官殺害、學校の放火、寺院・ホテル前での爆發事件等發生。 特に激化せるは昨年にて、一月には學校放火、商店街爆發による兵士・警官の死亡により三縣に戒嚴令布告。 その後も毎月の如く襲撃、爆發事件起り、當局側と武裝集團の雙方、及び一般市民の犧牲者も殖え續く。


 大東亞戰爭中も中立を守りし泰は、以後も戰爭を經驗せず、一九六○〜八○年代の山間部共産ゲリラとの戰ひや、 軍部政權崩潰までの數次にわたる流血クーデターありしものの、一九九二年以降は平穩なる状態續けり。 南西部沿岸の津波被害にて明けしこの二月六日、總選擧に於てタクシン首相の與黨「愛國黨」壓勝せる矢先の十四日の連續爆發なりき。


 首都盤谷より千粁、少數派イスラム系住民地域に於ける出來事ゆゑに國民の關心高からぬやうなれど、 テロ續かばプーケット等南西部リゾート地域への觀光にも響き、泰國の威信低下は必定なり。軍主導の強硬策續けをるタクシン政權、 深南部不穩を如何に抑へ込むか、周邊諸國も注目せるものゝの如し。


▼ 第八號へ
▼「逆旅舎」表紙へ戻る
▼「文語の苑」表紙へ戻る