逆旅舎>泰通信 第四號
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泰通信 (第四號)


          平成十六年十月  大口 童遊


ぺーッ Phet (泰語にて「辛し」。語尾の t は殆ど發音せず)


 タイは、「世界一辛し」とも云はるゝ泰料理を拔きには語れず。有名なるトムヤンクン(海老入りスープ)、ソムタム(パパイヤを削ぎて作るサラダ)、各種のカレー料理等、いづれも相當に辛し。泰料理の八割は辛し。余の如く辛さを好む者には天國、好まぬ者にはやゝ住み辛き國といふべきか。


 唐辛子は十五世紀末、彼のコロンブス 中米の西印度諸島にて發見、歐州に持歸りしものなり。その後十六、十七世紀にポルトガル商人等によりアフリカ、印度を經て亞細亞に持込まれしが、現今、泰と竝ぶ唐辛子使用國の南北朝鮮は、十六世紀末、豐臣秀吉軍により持込まれしとする説、逆に秀吉軍の朝鮮より日本へ持歸りたりとする兩説ありて定かならず。なほ「唐辛子」の「唐」は「舶來」の意味にて、中國に入りしは日本より遲く、十七世紀半ばといふなり。


 印度の辛きカレーは別として、東(南)亞細亞に於て現在、何ゆゑ南北朝鮮と泰のみが唐辛子を重用するかの理由は詳らかならず。


 唐辛子は最近、ダイエツト效果ありとして若き女性に人氣ありといふ。朝鮮、泰の女性の體形細めなるも、多少は唐辛子の故ならんか。


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