逆旅舎>泰通信 第二十二號
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泰通信 (第二十二號)


         平成十九年一月  大口 憧遊


亞細亞一?の新空港
Sanaam bin mai yai thii sut nai Asia ?
サナームビン マイ・ヤイ ティースット・ナイ エーシア?



 十五年ぶりのクーデター發生より九日後の九月二十八日、華麗なる新盤谷國際空港(スワンナプーム空港)開港す。都心より東へ三十粁、敷地面積九百七十萬坪は從來のドンムアン空港の五倍、成田空港(二百八十萬坪)の三倍強なるも、八年前に開港せるマレーシアのクアラルンプール空港(三千萬坪)と較ぶれば三分の一 なり。四千米級の滑走路二本を持ち、年間四千五百萬人の旅客扱ひ可能にて、計畫によれば四本の滑走路を建設すといふ。因みに筆者の知る限り敷地面積の世界最大は米國コロラド州デンバー空港の四千萬坪にて、成田の十四倍と桁違ひに大きく、四千米級滑走路六本を持つ。


 盤谷新空港はその代り、空港ビル總床面積十七萬坪及び管制塔の高さ百三十二米は世界一なりといふ。されば乘客は、到着口より入國管理窓口まで巨大なる通路を「動く歩道」乘繼ぎつゝ延々と歩く。されど世界人氣度一位、總床絨毯敷のシンガポール空港、二位の香港空港、黒川起章設計のクアラルンプール空港等に較ぶれば、豪華感今一つと言ふ向きあり。


 「世界一」を誇るはマハティール前マレーシア首相のお家藝なれど、泰のタクシン前首相(五十七歳)にも同様の性向あり。六年前完成のBTS(高架電車)、二年前開通の地下鐵、數多くの高速道路等、巨大事業に力を注ぐ。地下鐵、新空港は日本の資金援助によるものにて、空港建設費四千七百億圓の約半分は圓借款なり。


 豫定より一年餘遲れながらも高らかに開港を宣言する筈なりしタクシン氏はクーデターにて追はれ他國に亡命中。「スワンナプーム(黄金の土地)空港」の名付親プーミポン國王(七十九歳)の御臨席を賜るべき政府開港式も、新年以降に持越しとなれり。


 平成十九年は日泰修交百二十周年なり。日本の援助實を結び泰經濟及び日泰關係の順調なる發展に新空港の寄與を祈れど、クーデターに加へ新年早々に爆彈テロありて泰社會の見通し不透明なるは洵に遺憾なり。


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