逆旅舎>泰通信 第二號
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泰通信 (第二號)


          平成十六年七月  大口 童遊


トゥーク thuuk (タイ語で「安し」。語末のKは殆ど發音せず)


 首都盤谷(バンコク)は、街中至る所に屋臺あり、粗末なる路上卓にて食事するを見る。また屋臺にて惣菜を買ひ持歸りて食す。一夜、余も試みたり。揚魚一尾、竹の子の挽肉炒め、鷄肉、淺蜊炒め、魚汁――の五品締めて百バーツ(二百七十圓弱)なり。夫婦滿腹せり。一人當り約百三十圓也。泰人は毎日この惣菜を求め食す。故にアパートに臺所なし、と聞きて驚く。


 足代も廉價なり。日本人の多く居住せる都心プロンポンまで拙宅より五、六粁。タクシーなれば百六、七十圓、日本の十分の一以下なり。途中にBTS(盤谷交通機構=高架電車)の始發驛あり。泰語學校へ通ふにタクシーは贅澤と、始發驛まで「ソンテオ」に乘る。小型トラックに座席を取付けたるものにて、何處にても擧手にて乘車可能、一律約十一圓なり。電車賃五十圓強と合せ計六十圓強なり。されど冷房效きし電車に乘るは既に惠まれたる身分にして、庶民は冷房なしの「赤バス」に乘繼ぎて約十圓。ソンテオと合せ二十一圓にて都心まで行く。但し交通澁滯の中、長時間暑さにうだる苦行なり。涼も速度も、泰庶民には無縁と云ふべきか。


 今春、大富豪タクシン首相の娘マクドナルドにて働き、時給約六十五圓との報道あり。この時給も日本の十分の一以下なり。一般に生活必需品は安く、贅澤品は高し。平均物價は日本の四分の一乃至五分の一ならんか。「生命の値段も安し」といふ者あり。「車優先」の上、大半は無保險車にて「轢かれ損」なりといふ。安かればよしとも云へぬものなり。


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