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泰通信 (第十七號)


         平成十八年四月  大口 童遊


日本食ブーム Kamlang Niyom Aaahaan Yiipun
(ガムラン ニヨム アーハン イープン)



 日本食ブームと云つてよからむ。昨年暮れ盤谷の伊勢丹近くに巨大なる超高級複合百貨店「サイアム・パラゴン」出現し新名所となるが、その一階に軒を連ぬる飲食店中、日本食系列店「大戸屋」は開店以來、押すな押すなの大人氣。晝食時には行列をなすほどなれど、驚くは客の大半が泰人なることなり。


 大戸屋は昨年一月、日本料理店の數軒固まる通稱「日本村」近くに一號店を開き、續いてその近くのエカマイ店、プロンポーンの人氣百貨店「エンポリアム」にも系列店を開く。


 東京・池袋の驛前食堂なりし大戸屋は、平成七年頃より全國に二百店ほどの定食チェーン店を展開。その定食商法をそのまま盤谷に持込める感じ(大戸屋タイランド川上社長)にて、鰺やホッケ、金眼鯛の開き定食、和風ハンバーグ、キムチ丼等の獻立も日本と略々同じなり。二百バーツ(約六百圓)前後の値段は、盤谷に五百軒と云はるゝ日本料理店の中にては平均的なるらむ。


 然し乍ら他の日本料理店は客の大半が日本人なることと較べ、大戸屋の「泰人受け」は目立つ。何しろ泰人にとり、普段の屋臺食堂ならば一食百圓以下にて濟むなり。食堂の觀光客向け泰料理も三百圓ほどなれば、大戸屋はかなり高めの定食なり。


 それより前の一昨年夏、筆者は、都心外れの「秋吉」なる店にて「すき燒しゃぶしゃぶ食べ放題四百バーツ(税込約千二百圓)」の繁昌ぶりに驚く。三百近き席には連日若き泰人客溢れ、晝食・夕食時には豫約必要なり。


 同店の西岡支配人によれば、泰人に於る最初の日本食ブームは四、五年前、百貨店内の日本食系列店「FUJI」「ZEN」や定食「おいしい」の食べ放題商法の成功に始まるといふ。


 個々の店には盛衰ありしが、その間にも泰經濟の好調により新興富有層、中級會社員層育ち、懷にゆとりある泰人殖ゆ。日本企業の進出も盛んにて若者の日本への憧れと日本食人氣高まり、秋吉の「すき燒しゃぶしゃぶ」の成功、大戸屋の巧まざる成功に拍車を掛く。他の日本料理店にても、比較的廉價なる晝食には泰人客殖えたりとの説あり。


 スーパーには鮨コーナーあり。工場勞働者の集る市場の屋臺にては蟹蒲、卵燒等を載せたる握りも賣る。今や第二次日本食ブーム≠ニ呼ぶべきなるらむか。


 西洋、中華料理等との比較に於ても、日本料理の人氣上昇は際立つものゝ如し。


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