逆旅舎>泰通信 第十號
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泰通信 (第十號)


         平成十七年五月  大口 童遊


果物王國 ムーアン・ポンラマイ
Muang Ponlamai


 泰の果實王國なることは確かなるらむと一年前、亞細亞通の友より聞かされ、期待に滿ちて來るに成程その通りにて、 ドリアン、マンゴー、マンゴスチンと、毎食後、果物王國に住む仕合せを實感す。


 常夏とは言へ熱帶の果物は、暑季後半より雨季初にかけ、つまり四月より六月まで出荷の最盛期なり。 市場には果物の王なるドリアン緑色の刺に被はれて山積みされ、賣手は客の注文に應じ一個づつ庖丁にて殼を割り乳白色の 果實を取出して包む。何分にも安し。粁七八十圓也。果物は此地にては粁單位にて賣る。


 一夜冷凍し取出さば果物らしからぬアイスクリームの如き味にて病みつきとなる。但し高カロリーにて血壓上るとか 酒と共に食すななどと云はる。逆にマンゴスチンにはコレステロール低下成分ありて、ドリアン後に食せば好都合なりとの説もあり。





 マンゴーのとろくる如き甘さ、楊貴妃の好みしと傳ふる茘枝(ライチ)、味やゝ似たるランブータン、 小粒の龍眼、素朴なる味のソムオー(ざぼん)、ベトナム原産の奇妙なる形のドラゴンフルーツと、 それぞれに異る味を文にて傳へられぬは殘念なり。パパイヤは淡泊なる味ながら豐富安價にして且ビタミン始め榮養價高く 抗癌性にても知らる。


 椰子の實を求め來りて冷し、殼を割り果汁を啜れば、正に少年時代に讀みし冒險ダン吉の南洋の世界なり。


 無論、パイナップル、バナナ、苺、西瓜は一年中あり、スーパーには中國産の林檎、梨、葡萄も竝ぶ。 泰の自然の幸に惠まるゝ國なるは確かなることなり。


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