安東路翠 [諸葛亮]四
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『諸葛亮』  安東路翠- 新作能 謠曲 - 四


   中國遺跡にて「諸葛亮」一番を 峨眉山上に建立


夏より春へ、春より冬へ、季節を逆しまにゆくは、丞相に相まみえ給ふへ向ふがご とし。滿壑(たに)の松寒風に鳴りつらら下れり。
山上の嫂杉(れいさん)樹氷を宿し、尊きや銀世界をなせり。金頂の峰の 頂(いただき)白一色に、無垢清淨、敬虔な祈りの意を發す。
丞相のこころ傳へ來しなれば、嶺上氷雪の寒なるも色あり心あり風情をなせり。
時に一陣の風に撲たれしか嫂杉搖れつらら隕(お)つ。喝(ハツ)ときらめく一瞬 に、劉備玄徳皇帝の、萬感の想ひ傳ひ來れり。御ん時諸葛その嚴しさに茫然と哭く。
かへり見れば丞相の心月の如く、月亦我が心の如し。心月兩つつながりて相ひ 照らし 永(とこし)へにさんじ相まみえし
おもふに涙とまらず。
にはかに風の立ち起り、霧拂はれし峨眉麓下、嶺につづける山の並美、
邑蜀の田畑の廣がりて、瑞光盈臣(み)ち來り、天に氣あるかゆるやかに、あまつ御 空を彩るや、八彩の虹の懸りたり一重二重三重なりて、無限の空へひろがれる。
審らかなり我が君の温容髮髴と過ぎ給ふ。
無上のよろこびうつせるや、
五雲起りて玲瓏と
妙なる笙笛琴箜篌
嶺に發きし時の花嶺に發きし時の花
白雲はらひし虹の舞花をかざしの舞ひの袖
なびくも返すも舞あふぎ舞ひのあふぎの氣高さや


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