安東路翠 [永泰公主]:六
推奨環境:1024×768, IE5.5以上



『永泰公主』 安東路翠 作 - 新作能 謠曲 - 六


霞む月影望月の 雲吹きはらふ夢枕

歩みみだれて恥づかしや 歩瑤そろはぬ見苦しき

かくばかりを戒めて

星の光りもすべなきものと 下垂る想ひ憂かりける

今にはやいやしたまへ

晩餐の異郷の古き詩のしらべ 雨雲を八重かき分けて潮路越え 遙々來たる物の意と扶桑の邦の遊人の 夢幻のうちに古寺に求めし 瀟洒なる數珠の音と暮烟につつまる私語 均しくなりて黒石に 刻みてありし我がこころ

和魄は室に安らふも昇らずあり吾が魂

鬼神の猜ひ漱ぎはらひ 慈雨に開きし時の花

まかつ願ひし門出の時

光明遍昭の佛の法に繼がりて

玉の韻の貴かり

撫魂の行の尊かり

韻と禮と物の意と

ゆるけく歩む經行と

歩瑤のゆれが相投れて

無上の働き一つになれば

春燭のさくらの杯に水鏡

永代公の麗美の詩

なれこそは高貴の人なるや雅の玉體あらはして

馨撃に勝る密けき珠の音


*私語=ささめごと

*經行=ひんきん


▼『永泰公主』七 へ
▼「逆旅舎」表紙へ戻る ▼「文語の苑」表紙へ戻る