安東路翠 [永泰公主]:六 |
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『永泰公主』 安東路翠 作 - 新作能 謠曲 - 六 霞む月影望月の 雲吹きはらふ夢枕 歩みみだれて恥づかしや 歩瑤そろはぬ見苦しき かくばかりを戒めて 星の光りもすべなきものと 下垂る想ひ憂かりける 今にはやいやしたまへ 晩餐の異郷の古き詩のしらべ 雨雲を八重かき分けて潮路越え 遙々來たる物の意と扶桑の邦の遊人の 夢幻のうちに古寺に求めし 瀟洒なる數珠の音と暮烟につつまる私語 均しくなりて黒石に 刻みてありし我がこころ 和魄は室に安らふも昇らずあり吾が魂 鬼神の猜ひ漱ぎはらひ 慈雨に開きし時の花 まかつ願ひし門出の時 光明遍昭の佛の法に繼がりて 玉の韻の貴かり 撫魂の行の尊かり 韻と禮と物の意と ゆるけく歩む經行と 歩瑤のゆれが相投れて 無上の働き一つになれば 春燭のさくらの杯に水鏡 永代公の麗美の詩 なれこそは高貴の人なるや雅の玉體あらはして 馨撃に勝る密けき珠の音 *私語=ささめごと *經行=ひんきん ▼『永泰公主』七 へ ▼「逆旅舎」表紙へ戻る ▼「文語の苑」表紙へ戻る |