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『永泰公主』 安東路翠 作 - 新作能 謠曲 - 壱


天地分けし雲の穗天地分けし雲の秀異郷の旅に出でうよ
是は日の本の國に住む者にて候 遠き古代の唐國の長安の地に急がん
昔の皇帝眠る遺跡の麗き壁畫にまうでんと飛機を頼み
大陸の黄色の山竝み廣々と 諸嶽を眼下に遊行を料る


「旅遊」



舊き都の夢のあと
思ひ見るにも遙かなり
榮華の渭水遡り
長安に着きて候
こは十萬億土とききし西の方長安なるか
今は昔釋迦來迎の眞直路なれば畑中に古寺あり陵あり城址ありて
まこと聞きしにまさる景にて候
絲綢の綾錦佛の法も八ちまたに象どられて自からの心の中なる煩惱の燈斷ちゆく訓への至嚴なる
興教寺につきにけり
天竺よりの求法の旅玄奘三藏の菩提寺なり
行く程に空海學びし青龍寺の塔前に着き候
をりしも花の繚亂と
日本の櫻三萬本
次なり西域の尊き御僧鳩摩羅什の天竺の經四百餘卷を廣めし
幽邃の草堂寺にまうで候、
空の中道般若の智慧 羅什の愛せし翠玉を繋げし數珠を求めん
古の訓へ心にもちきたりて梁山の峰に着き候、
石人石馬に見まもらる 榮光傳ふ大唐の、峰の王陵壯觀なり
陪冢とて 墓室の奧の御室屋の、手に撫づる石の冷たきに 千年の御心なぐさめんと翠玉の數珠誦せり
壁に描かる宮女の列 名花の如き紅頬の 靜けき憂ひ、盡く觀れば
こころおきなく國元に傳ふべく候
         
- 注 -

*穗、秀=ほ
*唐國=からくに
*遺跡=ゆいせき
*渭水=ゐすい
*眞直路=ますぐぢ
*絲綢=シルクロード
*櫻=最近日本人によって寄贈さる
*梁山=りやうざん・墓地
*御室屋=みむろや
*陪冢=ばいちよう・御陵の傍にめぐらされた貴人の墓

         
安東路翠略歴

●絵画・書における表現活動
昭和二十八年     今関脩竹門下
昭和三十九年〜    (社)日本書作家協会会員
平成三年〜八年    全日展 理事・審査員
現在  素水会(藝術文化フォーラム、主催安東麟)顧問
〃   國語問題協議会評議員
〃   東久留米市民大学講師

●藝術活動歴
(個展活動 世田谷美術館展 東京藝術劇場 他十八回)
平成七年〜八年  月刊誌「傘松」(永平寺機関誌)二十回寄稿
平成七年〜現在  月刊誌「大法輪」論文・絵 随時寄稿
平成十一年〜現在 季刊誌「アジア遊学」論文・表紙絵 随時寄稿
平成七年〜現在  東久留米市広報誌 元日特集号・表紙絵製作「千年を見る」他
平成七年〜現在  新聞「ザ・ファミリー」元旦号表紙絵 「高潔」「尊厳」「特趣」「叡智」「善議」等
平成十一年十月  NHK藝術祭参加作品 「日輪の翼」日本画・壁画制作
平成十二年十月  古典能「登米能」国立能楽堂公演制作協力
平成十四年    「平成新選百人一首」(文藝春秋)解説参加
         「平成新選百人一首」(明成社)解説参加
平成十五年    「文語の苑」新作能、絵 連載
         浄牧禅院天井絵三十三體観音圖制作

         
安東路翠 個展

会期:平成十五年五月十四日〜十八日 午前十時〜午後五時
会場:府中市美術館 http://www.art.city.fuchu.tokyo.jp


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