言葉盡し頌 萩野貞樹 夫言靈は惇々の詞無くば宿らず切々の辭莫くば發せず荒魂和魂相覆ふは是在るに因る然るを今次戰雲霽れてより以來學匪姦驕を恣にして言を害ひ語を紊る此處に命なる哉文衰へて義現じ時窮して節乃ち見はる荒魂之會高志の士張巡の齒を摧きて一輯を成し名けて言葉盡しとす脂皺印さんを懼るるも披くに詞辭芬郁且筆鋒に天壤を容る是寔に以て悖戻の世風を蕩攘するものとすべし 言葉盡(づく)し頌(しょう) 夫(そ)れ言靈(ことだま)は惇々(じゅんじゅん)の詞(し)無くば宿らず切々の辭(じ)莫くば發せず。荒(あら)魂(みたま)和魂(にぎみたま)相(あひ)覆(おほ)ふは是(これ)在るに因(よ)る。然るを今(こん)次(じ)戰雲(せんうん)霽(は)れてより以來(このかた)學匪(がくひ)姦驕(かんけう)を恣(ほしいまま)にして言(げん)を害(そこな)ひ語を紊(みだ)る。此處(ここ)に命(めい)なる哉(かな)、文(ぶん)衰(おとろ)へて義(ぎ)現じ時(とき)窮(きゅう)して節(せつ)乃(すなは)ち見(あら)はる。荒魂(あらたま)之(の)會(くわい)高志(かうし)の士(し)、張巡(ちゃうじゅん)の齒を摧(くだ)きて一輯(いつしふ)を成し、名(なづ)けて言葉盡しとす。脂(し)皺(しう)印(しる)さんを懼(おそ)るるも披(ひら)くに詞辭(しじ)芬(ふん)郁(いく)且(かつ)筆鋒(ひっぽう)に天壤(てんじやう)を容(い)る。是(これ)寔(まこと)に以(もっ)て悖戻(はいれい)の世風(せいふう)を蕩攘(たうじゃう)するものとすべし。 ▼「文藝襍記」表紙へ戻る ▼「詩藻樓」表紙へ戻る |