『禹域遊吟』 その五十五
馬王堆 ばわうたい (たい)侯夫人の遺骸は、なほ生々しく記念館にホルマリン漬けになりたり。並外れたる顏、半ば潰れ半ば見開きし目、二千年後にかかる憂き目に遭ふを恨むが如し。
三重巨槨滿棺財 三重の巨槨(きょくわく) 棺に滿つる財
國夫人實壯哉
國夫人 實(まこと)に壯なる哉
豈料二千年後日
豈料(あにはか)らんや二千年後の日
濫將裸體供詩材 濫(みだり)に裸體をもちて詩材に供せんとは
[灰]
○ 昭和五十二年七月
*國夫人 馬王堆漢墓發掘を進めしところ三基の墓を發見、前漢初期の
侯家族の墓と知る。一號墓は
侯利蒼の夫人の、二號墓は
侯利蒼の、三號墓はその子の墓なり。
國夫人のミイラは殊に保存状態よし。
*裸體 國夫人のミイラはホルマリン漬けにて展示しあり。