第四幕 宮殿の夜の窓辺の段


(全幕踊りのみ)


樂奏變はり、照明明らむ。




(ト)公女一人、美しき清浄なる白色の部屋着を纏ひ、杼情をたたへて。 麗美なる花瓶にさしてある花を一輪取りて、


公女「茉莉花の告げくる窓を開きたり。」

長唄 棕梠の葉の、黒く重たき、
城壁の真近かに厚き回廊の、
古城の説話限り無し。
雪花石膏(アラバスター)の古き城。
いづれの王か、


若き皓歯の眸(め)の深き、
悠容と氣品に満ちて浮かび居ぬ。
西方に
聖なる星は、かゞやきぬ。
心韻は、
興りし風に斷たれしも、
寳玉か、
かの時流る星一ツ
追ふごと小さき
白き星、
慕ひて遊ぶ小さき星。
夜空に、
永き一瞬の、
眞の姿
刻みたり。


(ト)肅々と麗美なる舞のとき。