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■近衞上奏文  第二囘  解説:市川浩


本稿は近衞上奏文を文法、語法の面より抄出解説せるものなり。近年候文の行はれざる、これ以後、候文研究の對象として取上ぐる好例きはめて寡きがゆゑなり。而して本文書は昭和二十年二月十四日附、元總理にして公爵近衞文麿が 昭和天皇に和平促進に關し上奏せるものにして、歴史的にも重要なるをもつて、その全文および背景等に就き解説を試み、これを本サイト「侃侃院」に架網し、諸賢の御高覽を仰ぐものなり。
http://www.geocities.jp/tai_i/law/1945konoye1.html
より本文を引用


【早期和平ニ付近衞公爵上奏文】
          昭和二十年二月十四日上奏


敗戰ハ我カ國體ノ瑕瑾タルヘキモ、英米ノ輿論ハ今日マテノ所國體ノ變革トマテハ進ミ居ラス(勿論一部ニハ過激論アリ、又將來如何ニ變化スルヤハ測知シ難シ)隨テ敗戰タケナラハ國體上ハサマテ憂フル要ナシト存候、國體護持ノ建前ヨリ最モ憂フルヘキハ敗戰ヨリモ敗戰ニ伴フテ起ルコトアルヘキ共産革命ニ御座候。


「憂フルヘキ」、「ヘシ(べし)」はラ變型を除き終止形に接續するものなれば「憂フヘキ」が正しく、また「伴フテ」は「伴ひて」のウ音便なるゆゑ「伴ウテ」とすべきところ。


ツラツラ思フニ我カ國内外ノ情勢ハ今ヤ急速度ニ振興シツツアリト存候。即チ國外ニ於テハソ聯ノ異常ナル進出ニ御座候。我カ國民ハソ聯ノ意圖ハ的確ニ把握シ居ラス、カノ一九三五年人民戰線戰術即チ二段革命戰術ノ採用以來、殊ニ最近コミンテルン解散以來、赤化ノ危險ヲ輕視スル傾向顯著ナルカ、コレハ皮相且安易ナル見方ト存候。


「振興」は奮ひ起すの意にて、「内外の情勢」なる主語には「展開」或いは「暗轉」相應しからむ。或いは「シンコウ(進行)」の誤變換か。


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