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■八月出題分の解説  
著者:chitokuさん 校正者:市川浩


(問題文)


筆者はその審議の席上、「風光「明媚」を「明美」とするやうな代用漢字が果して歴史の批判に堪へられるか疑問である」と代用漢字に就いては全面的に廢棄するやう繰返し主張してきた。しかし代用漢字は國語の平易化に役立つてゐるといふ代用漢字禮讚派委員の抵抗も根強く、今囘の總會で代用漢字の完全追放にまでは至らなかつたのは、顧みて殘念なことだつた。
                (鹽原經央)


(應募文)


chitokuさん


筆者其の審議の席上に於て、「風光明[媚]を風光明[美]と成す如き代用漢字が果して歴史の批判に堪
え(=へ)得るか(=や)か(=や)疑問なり」(+と)斯く(=かる)代用漢字に就きては全面的に廢棄すべく(=き旨)繰り返し主張し来たり候。しかれども代用漢字は國語の平易化に役立つなりと言ふ代用漢字禮讚派委員の抵抗根強き(=く)に(=ひ)て、今囘の總會に於て代用漢字完全追放にまで至らぬ事、顧みるに甚だ殘念なる事なり(=に)候。


(解説)
赤字は誤、青字は添削試案。


◆ 候文への變換は、通常の書翰にも應用可能にて文語の練習にきはめて適當ならむ。


「根強き候にて」、「候(さうらふ)」はハ行四段活用の補助動詞にて活用する語の連用形に接續、「強き候」と連體形には接續せず、「候にて」も「て」は連用形に接續、「候ひて」の他「候程に」、「候へば」なども可。


「殘念なる事なり候」の「なり」は連用・終止同型にて誤には非ざるも、「なる」「なり」と重複、他の連用形「に」を用ゐるが口調も宜しかるべし。


(擔當者試案)


筆者その審議の席上、「風光「明媚」を「明美」などとする代用漢字焉んぞ歴史の批判に堪ふるや」と代用漢字の全面的廢棄を繰返し主張す。しかるに代用漢字禮讚派委員頻りに國語平易化の用を唱へて抵抗し、今囘の總會遂に代用漢字の完全追放を達し得ざりしは、顧みて遺憾この上なし。


(別解)


風光「明媚」に「明美」などゆゑなき漢字を宛つるは後世の謗りもありなむと、吾その用を正すべしと言ふもしばしばなるに、なかなか國語を易からしむとばかり言ひ繕ふ勢ひもなほ強く、この度の總會にても一向にその弊の改まらざるこそあさましけれ。


                   以上


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