侃々院>「岡崎偶感」岡崎久彦
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  岡崎久彦


  講演の後で 二月十九日   


 陸軍幼年學校同窓會に講演の機會あり、談偶々松井大將の陣中日記に及べり。


 講演後、陸士五十八期の一老紳士余に近づきて曰く、昭和十五年、氏、名古屋幼年學校に在籍の折、松井石根大將の訓話あり、大將曰く、南京事件において、皇軍の士道地に墜ちたりと。


 余の講話に同感すること頻りなり。松井大將の悔恨、そして二度と過ちを繰り返さざる事を後進に傳へんとせし意圖明らかなり。後進また能くその意圖を體して、南京事件以降は規律嚴正世界に誇るべき皇軍の傳統を守りたるなり。


南京占領時においては、上海以降の連戰終はるの解放感による士気に緩みあり、加へて通州事件など積年の排日侮日の恨みあり、放恣無禮講の振る舞ひ在りしは否定し難きものあり。


南京を例外的事件としてこの存在を認め、これを除きては、われらが父祖たる皇軍兵士の士気肅然たりしてふ史觀こそ正統史觀なれ。


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