侃々院>「岡崎偶感」岡崎久彦
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  岡崎久彦


  五月五日 端午辭官の詩  


 更に私事に渉ることをお許し願ひたし。
 平成四年六月バンコックを去るを前にして、余、感懐を拙き漢詩に託せり。最近になりて、バンコック在住の清水一智氏これを蔵するを知る。
 バンコック六月のゴルフ場、色濃き熱帯の花の艶麗なること、まさに。宗達、光琳の屏風の如し。想ふに、四〇年を隔つるの昔、櫻花爛漫の外務省に入省せしも、今停年退職を迎へて歸京せんとす。感無量なり。


翠玉艸中瓊玉瓣
春酣宛然達琳艶
花開紅顔始結纓
花去白頭終解冠



翡翠の緑の中にルビーの花瓣
春、酣(たけなは)にして、宛(さな)がら達琳の艶
花開きて紅顔始めて纓(冠のひも)を結び
花去りて白頭終ひに冠(官吏は冠を頂く)を解く。



 用語、發想、極めて平凡にして、學淺きを愧づ。
 蒼海先生の叱正を期待す。(岡崎久彦)


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