加藤淳平 - 現代日本人の意識の倒錯(ニ)改革 - 二十七
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日本の文化傳統、
     如何にして切斷せられしや
                  加藤淳平


二十七 現代日本人の意識の倒錯(ニ)改革


 一九九〇年代以降の日本にありては、改革の常に強調せられ、實際にも選擧制度、政治・行政制度の改變、實行せらる。改革を旗印に掲げ、國民の人氣を博したる小泉内閣、郵政民營化を達成す。政治家、改革を旗印に掲ぐれば、言論界、之を支持し、國民の人氣高まる。現在の日本に閉塞状況を感じたる國民は、政治家の「改革」を叫ばば、そを支持するとなむ見ゆる。

 政治家の掲げ、言論界の支持する「改革」に、一定の方向性あり。第一に、模範たるは米國等、歐米アングロサクソン諸國なり。第二に、中央政府官僚の、政策的主導權と權限を縮小せんとす。斯して近年の日本の「改革」、米國等、歐米アングロサクソン諸國の制度導入に努むると共に、官僚より政治家、政府より民間、中央より地方に、政治的決定權を移さんとするなり。

 日本は亞洲東部の中國文化圈に屬し、官僚統治の政治文化を共通にす。若干の變改を加へらるるも、中國より傳來せる官僚制度、日本の文化傳統に深く根を下ろす。國民の大多數、公務員を信頼するも、政治家は信用せず。政治家の大半は腐敗せるも、腐敗公務員は少數に過ぎず。そを國民は知悉せり。

 然りと雖も、歐米を模範とせる「戰後思想」、「變異戰後思想」を信奉したる政治家、言論人等、アングロサクソン諸國の如く、政治的決定權を把握すべきは、官僚に非ずして政治家なるべし、眞の民主主義政治家は、官僚出身に非ずして、政黨出身政治家たるべしと信ず。

 戰後日本に、問題解決に錯誤多かりしを、上に擧げたり。安保動亂然り。大學紛爭、亦然りき。問題の發生し、そが發生原因を誤判斷せるが故に、誤判斷に基づきたる對策、事態を更に惡化せしむ。近年の日本に、事態の誤判斷と誤對應の例多きは、日本の文化傳統と現實を無視し、歐米にのみ範を求めたる咎めならずや。

 政界、言論界に「改革」の聲囂しきも、「改革」の成果擧がらざるは、現實を無視せる故ならずや。「改革」の、傳統ある日本の官僚機構、官僚制度を敵視し、破壞し、公務員等の士氣を阻喪せしめ、腐敗せる政黨政治家と、癒着を深めしめたる結果ならずや。




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