加藤淳平 - 現代日本人の意識の倒錯(一)國際關係 - 二十六
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日本の文化傳統、
     如何にして切斷せられしや
                  加藤淳平


二十六 現代日本人の意識の倒錯(一)國際關係


 本來日本の問題、直接に國際的問題に結付くに非ず。日本の規模の國なれば、社會に固有の價値體系と、そが基礎を構成せる運動法則あり。固より地球化進む現代にありては、全ての國の國内問題、國外より影響を受く。されど國外よりの影響は間接的にして、多く第二義的なるに非ずや。日本亦例外ならず。日本の直面せる問題、第一義的には、日本國内の現實を直視せざれば、原因を知る能はざるべし。國内の現實直視を怠らば、問題解決し得ざるは必定なり。  
 更に日本の規模の國の、國際社會に活動すれば、國民の間に國を慮る心、即ち愛國心の存在するが自然なり。國の指導者、國民の愛國心に鼓舞せられ、世界の中に自國の生くる道を探る。如何にして、國の安全と利益を守り、文化的獨自性を保持すべきやに、肝膽を碎く。
 嗚呼、されど日本人全般の意識は「戰後思想」、「變異戰後思想」に覆はるるが故に倒錯す。日本固有の問題すら、原因、解決策を歐米に探るに至る。國民は自然なる愛國心を喪失す。政治指導者、官僚、亦日本の文化的獨自性を無視し、日本社會と國民の生活感覺の歐米に異るを忘却す。焉んぞ能く國の安全と利益の守らるる。  
 「戰後思想」に毒せられざりし福田首相の退任せる後、歴代首相の外交、日本の獨自性を顧慮する無く、歐米と一線を劃す努力を抛擲す。日本の指導者等、日本の地理的位置を忘れたるが如く、日本は「西側の一員」なりと宣言し、日本の文化的獨自性を恥づるが如く、歐米と日本に「共通の價値觀」、即ち共通の文化ありと公言す。
 時恰も米國の、露國との對立に勝利し、世界唯一の超大國の確固たる地位を確立せる時期に當れり。歐米を中心と見る視點に固執せる日本人の多數は、米國を中核とせる歐米の、昔時の帝國主義時代の如く再び世界を支配する時代に向ふと見たり。斯る幻影に惑はされたるにや、「戰後思想」、「變異戰後思想」の、歐米中心意識に呪縛せられし日本の政治家、官僚、企業人等、恍惚として幻影を逐ひ、國益を守る意欲を失ひたるが如し。  
 自ら自傷的に、歐米、特に米國の利益を圖る行動に出づ。日本企業の競爭力の祕密を、日本政府自身、米に開示す。多年に亙り開發せる固有の情報技術を棄て、使ひ勝手惡き米國製情報技術を、全面的に導入す。日本の金融制度を米國式に變革せるは、唯米を主體とせる國際資本の活動を容易にせんが爲なりしが如し。
 日本政府は、事前に米政府の了承を得ること無く、經濟政策を立案し能はざるが如き觀を呈す。米政府毎年の如く、日本政府の個別政策に容喙し來れり。長年に亙り國民の慣れ親しみたる日本固有の社會慣行すら、日本の政府指導者等、弊履の如く抛棄せり。況や戰後長く閑却せられたる文化傳統をや。


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