逆旅舎>泰通信 第三十九號
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泰通信 (第三十九號)


  平成二十一年六月  大口 堂遊(憧遊改め)


作家協會にて俳句を披露


    傘壽なほ暫し他人事さつき晴れ 堂遊

 筆者の近作なり。この俳句さる五月五日、盤谷市内のホテルにて開催の「泰國作家協會」年次總會の席上披露の榮に浴す。

 泰文學者岩城雄次郎氏の創設による「岩城文學賞」に就いては、昨夏の本欄(泰通信三十四號)にて紹介せり。日本人の登場する小説を泰國全土より公募、その第一囘授賞式をこの日行ひしものなり。

 泰國の著名なる作家、詩人、編輯者等の集ふこの總會の恆例行事は「シーブーラバー賞」授賞式なり。三十年以上の著作實績を持つ作家に授與する泰國最高の權威ある文學賞なり。日本人の名を冠する岩城文學賞の、それと竝ぶ行事となりし意義は洵に大なるものあり。當地の邦人紙「バンコク週報」の一面冒頭に報ぜしは洵にむべなるかなと思へり。

 岩城氏の友人として出席せし余も、授賞式に續く夕食會に主賓卓へ招かる。その席に、泰にて最も歴史の古き「サイアム・ラット」新聞のトンタム編輯長現れ、余に「俳句を一句書きて見せ給へ」と言ふ。余は咄嗟に、前日詠みし冒頭掲出句を書きて渡す。隣席に、泰にて知らぬ者なき詩壇の重鎭ナワラット・ポンパイリーン氏あり。岩城氏の古き知己なり。岩城氏より俳句の意味の説明を受け「良き句なり」と親指を立つ。トンタム編輯長大いに喜び、しからば會場の諸兄姉にも紹介せむと余を傍らの壇上に引上げ、余日本語にて朗讀せる俳句を泰語にて解説す。

    讀初は泰王朝の四代記 堂遊

 暫く後、泰らしき句も良からむと思ひ、去年正月に詠みし句をトンタム編輯長に示す。『泰王朝四代記』はククリット元首相・作家(一九一一〜一九五五)の名著なるが、「同氏は我がサイアム・ラット紙の創立者なり」とトンタム氏は更に喜ぶ。故ククリット氏は最近、ユネスコが「世界の傑出せる人物」に選べりといふ。故に同紙は記念の本を近く出版せむとす、その際この俳句を本の中にて紹介せむ、と張り切る。

 余は泰に來りて五年余、自作の俳句が泰作家協會總會にて披露の榮に浴さむとは夢にも思はざりき。岩城文學賞のおこぼれ≠ノ過ぎぬ插話なれど、人生には思ひがけぬことあるものと感慨を覺ゆ。


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