愛甲次郎◆中国紀行
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『中国紀行』(平成十六年五月) 愛甲次郎


  第九回(最終回)


◆ 五月八日


 早朝飯店を発し、驟雨の中浦東空港へ車を駆れり。思へば我等全行程総て好天に恵ま れ、山東省にありし折の如きは中国全土総て嵐にして山東のみ晴天なりき。ただ旅行 の最後のこの瞬間驟雨に遭ふ。この雨を伴ひて東京に帰らんかと笑ふ。機上新聞に目 を通し、将棋ゲームに打ち興ずるうち機は既に成田にあり。


 帰りの手続は往きにも増して滞りなく、皆に別れを告げ、メトロライナーにて帰途に 就けり。


 思へばこの旅行の目的は曲阜、泰山、三峡と、儒教或は三国志に由縁の地を訪ぬるに ありき。されど最近中国人の旅行熱頓に高まりていづくも混雑喧騒を免れず。心静か に懐旧の念に浸るの愉みは最早遠く及ばざることとはなりぬ。慶すべし。賀すべし。 之皆中国経済発展の成果なり。道路、賓館、厠の整備進みて観光地は若者の天下とこ そなりぬれ。思はざりき、歴史の旅新中国発見の研修旅行に終らんとは。 
      (完)



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