安東路翠 夔ノ神(二) |
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『 山梨縣立博物館の展示場正面に御神體おはしましけり 日頃しのび まつらるる御影を 燈火 明るく照らしさぶらひしに 神なれば憚りおぼえ 御すがた 木像也 塗料 剥落ちたる木目見ゆ 角なし 古へより神あり祈りあり漢籍に親しみし太安萬侶は五部の 「我國の古俗は中國の古俗と密接につながれり」(白川靜) 扨こそ夔の神の御正體御室の山の御社に降りてこれなる木像に憑依せしなりや 夔神中國古代を出で神性を帶び自然神となりて雷多き甲府盆地の社に雷の神の使命を以て祀らるるは肯ぜらるるところなり 「夔神石を打てば百獸みな舞ふ」と『書經』(尚書)にあれば山梨岡神社の祭り盛んなりし御事も肯ぜらる 山梨懸立博物館の學藝員告りて曰く 「窪八幡神社に源晴信(武田信玄)の武運祈願寄進の木造狛犬あり 岡神社のU+5914神に類似ありとて 年代ほか これが をりしも 運良きかな 窪八幡神社の指定文化財『木造狛犬』山梨の根津記念館に展示されてありと聞けば彼處(かしこ)に急げり 狛犬は三對六體なり 棚の中に打ち揃ひて坐しけり 木製なり 剥落せるとはいへ金色他著彩あり 嵌入されし水晶の玉眼はいつれの時にか失はれてあればこれぞ神聖なる 阿形は雌なりとて獅子形 吽形は雄なりとて御狛形 薩摩の佛師 林可作り玉へりと墨書あり(天文十七年) ▼「逆旅舎」表紙へ戻る ▼「文語の苑」表紙へ戻る |