永泰公主 - 三 -  この頁は、文末に注釈があります。プリントアウトしてご覧になることをお奨めします
推奨環境:1024×768, IE5.5以上



『永泰公主』 安東路翠 作 - 新作能 謠曲 - 三


唐の詩の柳絮を飛ばし
吟じしうたはいにしへも
審らかにして
不思議やな 里の女と見えたるもひとときをしてたちのぼる 幽かに床し薫香と かんざしのねいろ 白きうなじも花の貌、奇はや、あやしきなり御名告候へ
乾陵に湧く麗泉を
撥みつゝ釀す夕宵の 千金の趣
打ち眺むれば春夕の四方の景
桃李參へて
一つとならん
御時のかく懷かしきかな
この興のうれしきに御謂委しく傳へ候へ
驪山宮の花のみ跡
春蝶の羽ゆるく舞ふ
春夏秋冬高欄に倚り
飽かずに吟ず信の詩、今天眞の語らひ寶樹の下
陵嶺に續く石道に並みし石像鶯の舞
禮樂の列肅然と陵參道
正す胸襟敬虔に
裳裾を搖らし宮女の列
細腰の瓔珞戀へば
粧ひの衣の珍しの青錦
豐滿の笑みし唇
天性の御貌
琴笛空篌金冠を戴きし 玉の簪端々し
         
- 注 -

*奇はや=かけ聲
*撥みつゝ=はみつつ
*御謂=おんいはれ
*驪山宮=りざんきゆう(驪山は唐人の愛せし名峰)
*信の詩=まことのうた
*瓔珞=珠の飾り


▼『永泰公主』四 へ
▼「逆旅舎」表紙へ戻る
▼「文語の苑」表紙へ戻る